『ケンハモで音楽をどう吹くかではなく、そいつで音楽をどう演るかだ!』
こんにちは。お元気ですか?得田サトシです。ここ数日は公演情報を載せるのが精一杯で、日々の活動をお伝えする時間がなかなかとれずにいて、反省しています。突然ですが、この8月がいまから楽しみでなりません。なぜかって?いまから、その理由をお話します。
凄い音楽企画があるのです。
あなたの想像を超えた世界があるのです。
想像をこえた世界って。いったい、何?
これから先は、音楽に関する長文の内容になりますので、音楽や芸術に興味のない方は、また別の機会にどうぞ。
まずは僕の音楽をはじめるきっかけをご紹介させてください。
高校生の時、あるきっかけで演奏家になりたいと本気で思い、音楽に関わるさまざまなお店に通う毎日を過ごしていた頃。
演奏家たるもの、いつ何時でも楽器は持ち歩かないといけない・・・と何かの記事で読んだことを鵜呑みにしていた、17歳の僕は、近所の楽器屋でいちばん安い、小さなハーモニカを買って、フォークソングや流行歌などの短いフレーズを練習しては、ポケットにいつも持ち歩いていて、演奏できるタイミングがあれば、ポケットからとりだして、自慢げにハーモニカを吹いて見せていました。
少し誉められた程度で、たいした曲もできないのに、自慢げに演奏を披露する僕の勘違いは日に日にエスカレートしていきました。
そんなある日。
老舗の喫茶店で、調子にのる僕の姿を見かねた店のオジサンが、ハーモニカで音楽を演りたいんなら、この本をまず読め!と手渡されたのが、”ジャズハープスタディ”と表紙に書かれた分厚い本でした。
ジャズハープとはジャズハーモニカの略語だそうで。
ようするに、このジャズハープスタディというこの本は、ハーモニカでジャズ音楽を演奏するための入門書です。
オジサンから手渡されたこの本は、ずっしりと重く。古びた表紙には1982年初版と書いてあります。
帰宅後の自分の部屋で、オジサンからもらった入門書に、いったい何が書かれているんだろうと、ページをめくってみると…
「ぎょえー、なんじゃこりゃ!!書いてある言葉の意味が全然わからん!!」
まだ、音楽を始めたばかりだったとはいえ、書店の音楽関連本コーナーにおいてある、
教則本は、かたっぱしから目を通していたし、音楽理論もそこそこ勉強していたという自称「音楽理論家」の得田でしたが...。
この古い書物にかかれていることを全く理解できない自分にショックをうけました。
もはや、目次にかいてある見出しさえも読解できず...。読みすすめるのを断念せざるおえずに終わりました。
その時に、『自分の想像をこえた世界が世にはたくさんあるんだな』と、骨身に染みたわけです。
その後は、大学のジャズ研に通いジャズピアノの魅力にはまり、ピアノをはじめ、ジャズライブハウスに通いつめる毎日をすごし、仲間と出合い、多くの方に応援していただき、上京して、そして、ジャズ以外のさまざまな音楽にふれて、現在にいたります。
大好きなピアノと大好きなハーモニカの特徴を合わせもつ、鍵盤ハーモニカの演奏家として、
SUZUKI楽器ブランドの鍵盤ハーモニカ「メロディオン」の公式プレーヤーとして、今は活動させていただいています。
今思うと、あの日に、オジサンから受け取った一冊の本が、今の自分をつくるきっかけになったのかもしれません。
10年以上の長い期間、本棚の奥にしまわれたまま、日の光をみることはなかった。
ハーモニカ入門書"ジャズハープステディ"
先日、帰省の際に大掃除をして、10年ぶりに本棚から取り出して、ページをめっくてみました。
~ハーモニカ入門書"ジャズハープステディ"目次より~
序文:(コードについて)
第1章:第一歩(R&Bサックスプレイヤーのスタイル分析)
第2章:巨匠のマスター・ワーク 練習曲(マイルスデイヴィスのSo What)
以下省略。
ハーモニカの入門書なのに、序章の後12ページから「第一歩」といいながらも、R&Bサックスプレイヤーの高度なスタイル分析からはじまり、24ページ目で、いきなりマイルスデイヴィスの※"So What"を練習曲に練習しなさいとかいてある。(※ジャズの中でも専門的なスタイルである"モードジャズ"という分野)
おまけに、"オーバーブロー"という裏技的なテクニックを使用しないと練習曲はすら演奏できないという前提条件付き。
かなりのスパルタな内容で、、、
こりゃー、こんな高度な内容の本を、流行曲やサヨ〇ラバスがハーモニカでやっと吹けるレベルになった高校生に渡しても、まず理解できんでしょ。(苦笑)
...と思いながらも、
懐かしさと同時に、あの時にこの本のページをめくった時に感じた感覚を思い出しました。
それは、『自分の想像をこえた世界がまだまだたくさんある!』という希望の感情です。
そして、この本を読んでもうひとつ発見したことがありました。
本のコラム欄で、1979年のトゥーツ・シールマンス(ジャズハープ奏者の巨匠)のインタビュー記事が載っています。
ピアニストのビルエヴァンスとの録音が終わったばかりの頃なので、この記事の内容もとても貴重なんですが(無論、10年前の僕はこの記事の価値も全く知らない。)、
この記事の中で、まさに今の僕にとって、一番こころにのこる、言葉がありましたので、紹介させてください。
1979年のトゥーツ・シールマンスの名言。
『ハープ(ハーモニカ)でジャズをどう吹くかではなく、そいつでジャズをどう演るかだ!』
ハーモニカでジャズを演奏することは物理的に不可能だとも言われていて、ハーモニカ奏者からジャズ音楽は見向きもされなかった時代に、
信念を貫く姿はとても格好よい。
この言葉の意味をヒントに…。
『ケンハモで音楽をどう吹くかではなく、そいつで音楽をどう演るかだ!』
鍵盤ハーモニカの現状におきかえてみると、
ケンハモ(鍵盤ハーモニカ)は子供が使う楽器なので、聴き応えがある音楽を演奏するのは難しいと思われている。
だから、聴き応えがある楽曲、いわゆる超絶技巧が必要な難曲を選んで演奏したりして、ケンハモは難しい曲でも
十分に演奏できることを証明したいと考えていました。
つまり、テクニックにしろ、フレージングにしろ、ケンハモで音楽をどう上手に吹くかばかりを考えて演奏していました。
そうではなくて、ケンハモで音楽をどう演奏するかが大事なんですね。
つまり、ケンハモでしかできない音、その持ち味を生かした音楽を創ることを考える方がよっぽど大事ということです。
音楽に対する考えが一歩深まった僕の、得田サトシのケンハモの大規模な演奏ツアーが8月に関東と長崎で開催されます。
この8月が、いまから楽しみでなりません。
8月5日に横浜市フィリアホールでの演奏。
8月6日に東京メロディオンフェスティバルでの演奏。
8月末から長崎市、諫早市、大村市、島原市で開催します。
【ハモローグ】
~創造の息吹きを奏でる小さな鍵盤の物語~
あなたの想像をこえた音楽の世界がそこにあります。
ご期待ください。
詳細(長崎市公演)は↓
https://docs.google.com/forms/d/1QsciqVgwmjO1wTNFTtKdU62cvyikrmdrxRijrD3SEks/viewform
その他の詳細もお楽しみに!